夏目漱石作「夢十夜」全十夜配信いたしました!
先週から毎夜10時に配信してきました、夏目漱石作「夢十夜」。
昨日、全十夜をアップいたしました。
夏目漱石の「夢十夜」は、今から112年前の1908年の7月~8月にかけて朝日新聞で10回連載されました。
今回、結構な時間をかけて一話ずつ作ってきました。声仕事なら、1時間もあれば終わってしまう録音も、自宅で録音となると、なかなか終わりません。何度録音しても気に入らない。やっと録音し終わっても、サムネイルだとか、写真をどうしようだとか、こだわるときりがない。ちっとも前に進みませんでした。ユーチューバーの人たちって、大変な思いをして作っているのですね。すごいわ~。
ですが、こうして終わってみると、全部自分の思うように作れる喜びも感じました。
さて、朗読は、精読よりも、より細かく本を読んでいく作業です。ただ文字を読み上げるものではありません。
なんで、作者はこの言葉を選んだのか?この時期、作者に何が起こっていたのか?この場所は、具体的な場所があるのか?
などなどなど、気になることは、まず調べますし、足を運びます。今は現存しないものでも、当時の写真や、遺構、手記などを読んだりして、出来るだけ物語の中に身を置きます。
あと、昔の映画の中にもヒントがたくさんあります。黒沢映画は、作品を読んでいると、よく頭の中に出て来ます。
現実になくても、頭の中で、今まで見て来た風景や映像を合成して想像と妄想。日常の中にも転がっています。
私にとって、朗読は、映画を撮るようなものでしょうか。シーンごとに絵コンテが描けるくらい具体的な映像が浮かんでいます。そうでないと、自分の中で気持ちが悪い。ウソはバレますから。
最終的にお客様の前で読むことで完成しますが、朗読の醍醐味は、そこまでの過程を楽しむことにある思います。
さて、この「夢十夜」。第一話では、「百年、待っていてください」と目の前に横たわっている美しい女が「自分」に最期の言葉を託して死んでいきます。遺言通り、真珠貝で穴を掘って女を葬ります。そして、遺言通り、100年、女の墓の前で座って待つのです。なんと美しい描写!めちゃめちゃロマンチスト!ラストのシーンなんて、映像が見える。NHKの植物が成長する早巻の映像のように、百合の花が自分に迫ってくる!
第三夜も、ドキドキしてなかなかいいし、第六夜も明るくて面白い。この3つの話は、高校の教科書にも掲載されていますしね。
でも、第七夜辺りから、辛い作品が続く。彼は、1900年5月~1903年1月まで、文科省よりイギリスへ行っているのですが、精神的に参って、後から現地に行った人が心配するくらい衰弱していたといいます。本当に嫌だったんでしょうね。第七夜は、本当に見た夢だったのかもしれません。昔のトラウマが夢に出てくることってありますよね?あんな感じ。
これを書いている頃は、朝日新聞に入って1年ちょっと。他にも仕事もあったでしょうから、毎週締め切りとなると、やっつけにもなりますわね。第八夜は、特にそんなものを感じながら読んでいました。
第十夜、ついにラスト。これは、いったい誰の夢なのか??いや、それが面白いんだよ、、、って思えばいいんですけどね。豚が何万匹も自分の方に向かってくる。それを、一匹ずつ谷へ落とす。豚が逆さまに数珠つなぎになって谷へ落ちてゆく。・・・・映像浮かびます。ラストの一文は、結構考えたんじゃないかな~。
作品は、すべて「朗読の部屋」でご覧いただけます。これから、私の作品ばかりでなく、素敵な朗読をされる受講生の方々の作品もアップして参りますので、お楽しみになさっていてくださいね。