後ろめたさを振り切って朗読会へ・・・娯楽ではありません。仕入れです。

毎日毎日新型コロナウィルスの感染者数をカウントしながら、安倍さんや小池都知事の会見、ネットニュースの洪水に流され、ほとほと疲れております。でも、投げやりになったりしてはいけないのです。がっかりしたり、うんざりしたりするような話題から目を背けてはいけないのです。

昨日、実家から帰る新幹線の中で、のこの春行くはずだった公演が2つも中止になったとメールが入りました。

彼らは、この春の舞台にどれだけの準備と稽古を重ねて来たのでしょう。

舞台に携わったことのある人ならわかると思いますが、本番のたかだか2時間くらいのために、沢山の人の労力と、時間と、お金がかかっています。何よりも思いが詰まっています。彼らの気持ちを考えると無念でなりません。

過年度の受講生が誘ってくれた卒業公演が中止に。劇団山の手事情社 主宰 安田雅弘さんの言葉→研修プログラム修了公演『オドラデク』の公演中止のお知らせ(4/2)

実はそれ以外にもう1件。先日、過年度の受講生たちがこの新型コロナウィルスの騒ぎで出来なかった発表会をぜひ見てください!と、わざわざ場所を取って、稽古をして、そして招待をしてくれたのです。換気をよくするために換気扇を廻してくれたり、100均でスリッパまで用意してくれたり。

自分たちで台本まで書いて、配役でもめてまで作ったという舞台のクオリティーはめちゃめちゃだったけど、思いが詰まりすぎてて溢れてキラキラ迸ってて、あんな素敵な舞台は今まで観たことなかった。もー、こいつらの誰かから感染しても、ま、いいっか!って思うほど久しぶりに明るい気持ちにしてくれました。

そして、今日。ギリギリまで行くか行くまいか悩んでいたのですが、やっぱり行ってしまいました。

idenshi195「葵上」

こちらの舞台も、昨日4月2日の段階で、明日の楽日の公演の中止を余儀なくされ、今日4月3日が楽日になってしまいました。さまざまなイベントが中止に追い込まれる中、ここは最後の最後まで試行錯誤を重ね、お客様も舞台も守ろうと必死に頑張っていました。世の中の流れを見て、払い戻し希望の人たちにもギリギリまで対応していました。お知らせの文面からあふれ出るこの舞台に対する思いに、たとえ行かない選択をしても、払い戻してもらおうとは思いませんでした。「少しでも足しになれば・・・」ささやかですが、そんな応援のしかたもあると思いました。

行って良かったです。息をするのもためらわれるくらいの静謐な空間で、源氏物語の絵巻が繰り広げられます。言葉を発していないときも表現をしている、と作・演出の高橋郁子さんがおっしゃる通り、最後の最後まで幽玄なシネマでした。次回公演も決まっています。詳しくはこちら

40席ほどの空間に、おそらく20人~25人くらい。みんなかなりの間隔を保って、演者に向かって一方向を向いて、息を殺して見るのです。これで感染したら、電車に乗ってる人たちはほぼ感染でしょう。

思いが込められたものに触れることは、やめられません。特に、送り手でもある私は、常にいろいろな表現に触れて刺激を受けていないと古くなって腐ってしまいます。もちろん娯楽でもありますが、意識は仕入れです。

手洗い、うがい、3密を避けながら、沈鬱なこの状態の中でも活動を止めるわけにはいかないのです。

最近は、心ある偉大なプロたちが無料で毎日配信していたりします。本当に有難いことですが、無料で拝見するのが心苦しい。あの、チックコリアが、毎日生で配信してくれるなんて!神田伯山が正月演ったばかりの「畦倉重四郎」全19話を神田伯山ティービィーで見せてくれるなんて!

とかく芸術の分野は軽んじられがちですが、今のクオリティーに至るまで、どれほどの時間と労力とお金をかけて来たかを考えて見てください。「ちょちょっと弾いて~」「ささっと読んで~」「さらさらっと書いて~」って、そういう感覚はやめましょうね。

一刻も早く、こんな世の中から回復し、また世界が元気になりますように。

久しぶりの両国。りょうごくばし。

黄昏時。

回向院。

人影疎ら。

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