令和8年なないろひろば あなただけに読む朗読会at町屋 ご来場ありがとうございました。
令和8年のなないろひろば「あなただけに読む朗読会 at 町屋」が無事に終了いたしました。お陰様で今年で16年目を迎えることができました。

お盆の最終日というお忙しい時期にもかかわらず、近隣の皆さまをはじめ、北海道、福島、神奈川、茨城、千葉など遠方からも多くの方にご来場いただきました。心より感謝申し上げます。また、温かいご感想もたくさん頂戴し、大変励みになっております。本当にありがとうございました。
朱川湊人さんの作品との出会い
今回私が朗読させていただいたのは、朱川湊人(しゅかわ みなと)さんの『虹とのら犬』(『あした咲く蕾』所収)という作品です。
朱川さんの作品との出会いは、息子が小学生の頃でした。塾の国語のテキストで『いっぺんさん』の中の「コドモノクニ」を読んだのがきっかけです。そこに描かれた昭和の空気感が、まるで自分の過去のパラレルワールドのように感じられ、すっかり魅了されてしまいました。それ以来、朱川さんの作品はほとんど読んできました。
昭和のノスタルジックホラーというジャンルを確立された朱川さんは、高度経済成長期の東京や大阪の下町を舞台にした作品を数多く描かれています。東京の下町である「町屋」という場所で、いつか朱川作品を紹介したいとずっと考えていました。
作品の背景にある「三河島事故」に向き合って
舞台である荒川区を描いた『虹とのら犬』を読み進めるうち、その描写があまりにも具体的だったので、「朱川さんの実体験も混ざっているのかも?」と感じるようになりました。
作品の中には、昭和37年に起きた「三河島事故」という列車多重衝突事故が出てきます。恥ずかしながら私はこの大惨事を詳しく知りませんでした。NHKのアーカイブ映像などで当時の状況を調べるにつれ、深く胸がえぐられました。
浄正寺。左側の席中には、「三河島事故慰霊 聖観音安置」の文字。
私は朗読する作品に向き合う際、納得がいくまで調べ、可能であれば現地に足を運ぶようにしています。今回も、作品に登場しご遺体を安置したという「浄正寺(じょうしょうじ)」へ足を運びました。
静寂に包まれた境内の参道には、事故当時、線路の築堤に植えられていたツツジが移植されており、慰霊碑と観音像が静かに佇んでいました。
事故現場の築堤にあったツツジをこちらで移殖されています。
三河島事故の慰霊碑。


奥の突き当たりに本堂があります。
浄正寺のご住職との対話
はじめは「関係者でもないのに尋ねるのは不謹慎かもしれない」と躊躇しましたが、意を決してご相談したところ、後日50代前半のご住職がお話を聞かせてくださいました。
事故当時、ご遺体を受け入れたのは当時50代前半だったお祖父様(先代ご住職)だったそうです。ご住職からは、当時の生々しい記録写真や、160名ものお名前と享年が刻まれた慰霊碑のこと、二次災害を逃れようと線路に降りた人々が巻き込まれてしまった痛ましい経緯などを詳しく教えていただきました。
事故当日もこちらにご遺体が安置されました。
事故から64年が経ち、ご遺族の高齢化や風化が進む中、近年では鉄道各社が研修に訪れているというお話も伺いました。
結局、私は浄正寺へ3度足を運び、三河島駅周辺も巡りました。街並みは変わっていても、作品に出て来たと思われる商店街や主人公が住んでいた場所かも?という路地を歩くうちに、単に「朗読する」という感覚を超え、まるで知人が遭った出来事のように身近に感じられるようになっていきました。
朗読とは「誰かの人生を生きること」
私が生まれる前に起きた見知らぬ場所での事故ですが、この作品をきっかけに深く知ることができました。
私にとって朗読とは、「自分ではない誰かの人生を生きること」です。
今回も作品と背景にある事実に誠心誠意向き合い、私の頭の中にある風景の中でそれぞれの人物を生きました。ご来場いただいた皆さまの心に、少しでも届いていましたら幸いです。
改めまして、本当にありがとうございました。さ~て。
また次の旅へ出ますよ~。

受講生様、元受講生様と。

